肺炎球菌 ~匐行性角膜潰瘍 2020年9月公開
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、1881年にアメリカ陸軍の内科医であったGeorgeMiller Sternbergとフランスの化学者ルイ・パスツールによって同時に独立して単離された。菌が二つ接した形態をとるため肺炎双球菌とも呼ばれる。本菌のほとんどが莢膜をもつため、グラム陽性球菌の周囲が透明に透けてみえ、好中球による貪食に抵抗して病変は重篤化しやすい。血液寒天上ではコロニーは不完全溶血(α 溶血)を示し、コロニー周囲が緑色になる。本菌は、ヒトの上気道に存在し、肺炎、髄膜炎、中耳炎などの起炎菌となるほか、眼科的には角膜炎、結膜炎や涙嚢炎などを惹起する。肺炎球菌による角膜炎は、限局性膿瘍(潰瘍)がある方向に進展、移動するようにみえるため、匐行性角膜潰瘍と呼ばれる。戦前の「突き目」による感染性角膜炎の大半が本菌によるものであったとされる。また、本菌による涙嚢炎は高齢の女性に多くみられる。(松本光希)
日本眼感染症学会
Japanese Association for Ocular Infection
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