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結核菌 ~網膜血管炎 2020年10月公開

Mycobacterium tuberculosis(ヒト型結核菌)は、飛沫感染によって肺組織細胞内に寄生する。多くは無症候性で終生にわたって潜伏感染の形をとるが、免疫能が低下している宿主では発病に至る。明治時代から昭和初期にかけて多くの罹病者を生み出し、亡国病とも呼ばれたのは周知のとおりである。本邦では1951年の結核予防法の制定以降、抗生物質の普及によって患者数が激減したが、先進国のなかでは依然として感染率と死亡率は高い状態にある。最近は従来の薬物療法に抵抗する「超多剤耐性」結核菌感染が問題となっている。結核菌が直接眼内に感染し、病巣を形成することはまれであるが、結核菌に対するアレルギー反応としての網膜血管炎は散発的に経験される。網膜静脈(一部動脈)の境界不鮮明な白鞘形成と出血を伴った血管炎を特徴とする。血管閉塞によって網膜の虚血を来し、糖尿病網膜症のように新生血管や増殖性変化を生じていく。感染の有無を判断するためにツベルクリン皮内反応とクオンティフェロン検査が行われる。(後藤浩)


提供 後藤 浩

日本眼感染症学会

Japanese Association for Ocular Infection

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